第六章 前半 :自分を伝えること語ることに慣れておこう


特別連載企画

~ クレーム対応のベテラン、椿氏が語る ~ feedback-2990424_960_720

◆自分を伝えること語ることに慣れておこう
いつか教壇にたって、教えるということをしてみたいという気持ちがあった。
大学でも高校でもいい、しかしながら、教員免許を持っているわけでもなく、
経験した仕事も後々、経営学や心理学、語学のように授業科目として「教える」に相応しいものとはかけ離れたものだった。

私は27年あまり勤務したホテルニューオータニを51歳の時に退職した。
退職して4年が経過した冬に、忘れないでいてくれたのか、ニューオータニの人事課長から連絡があった。
内容を聞くと、大学で講師をやってみないかという内容だった。教科はと尋ねると「ブライダル」という。
ブライダルの業務はたしかに経験はあるが、それも12年も前のこと。
当時とはブライダルの傾向も変わっている。その市況も理解していなければ、
今後この業界がどのように展開していくか全くわからない。

高崎駅から上信電鉄に乗り換える。新幹線でいく高崎までの道のりは面白くもなんともないが、
このローカル電車はのんびりしている。
さほどスピードも出さないからS字クランクみたいなカーブを繰り返して進む。
高崎から三つ目の駅名もズバリ「高崎商科大学」。そこが非常勤講師としての勤務地だ。
4年制と2年制の短期大学からなるが、大学名の通り商業の単科大学だ。
私が受け持つのは、短期大学の「ブライダルビジネスコース」の1年生対象「ブライダル総論」。
半年間15回の90分授業が担当科目である。

「ブライダル総論」という授業名の通り、ブライダルの基礎、まさに入口の部分を講義する。
具体的には婚礼の歴史。世界の挙式。挙式の種類。
披露宴の内容などを、「ブライダル総論」という名の教科書に沿って進めていけばいいのだ。
しかし、18や19の女の子が「婿入り」とか「付文」なんかでピンとくるか。
ヒンズー教やイスラム教の婚礼に興味がわくか。

2年後には社会に出る彼女たちに何か印象に残るもの、
ほんの一言でもいい、一つの動きでもいい、そんなものに触れてもらいたいと思った。
それに、この大学は実学を学ぶことを旨とし、謳っている大学である。

私はかねがね学生から就職採用試験を経て社会人になるとき、心がけてもらいたいことがあった。
それは

1、きちんと自己紹介ができること
  名前、出身校はもちろん、自身が興味あるもの、惹かれるものを端的に言えること

2、説明するとき、キーになる言葉をしっかり表すこと
  たとえばプレゼンテーション、感想を述べるとき、自身が伝えたいことを明確に伝えること

3、人の意見をしっかり聞き、まとめていくこと
  人の話をきちんと聞き、それを反映するのは難しい。
  しかし、その言葉を反復したり、発言している人の顔を見ることは、安心感を与えるものである。

こんな意識がある。授業スケジュールだが、15回の講義のうち1回目はオリエンテーションである。
もちろん授業をどのように進めていくか、評価は何を基準にして判断するかを説明するのが主たる目的だが、
私の方は学生たちとざっくばらんに話をしたいという思いもあった。
今後の授業で思ったことを自由に言ってほしいし、
学生たちにとってどんなことが興味あることか知りたいと思っていた。
だからこのオリエンテーションでは、受講する学生に自己紹介をしてもらうのが常だった。

「名前と出身地、それとこの学部で何を学び、将来どんな仕事に就きたいか話してください」

「えーっ、まだわかんない」

そんなレベルだった。

「大丈夫、いま思っていることでいいよ」

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