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第三章 前半 :ちょっと得するプロトコルの意識


特別連載企画
~ クレーム対応のベテラン、椿氏が語る ~  

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●大喪の礼の思い出 
今の会社に入社して1年あまりたったとき、同じ施設の同僚から尋ねられた。
 
「入社式で看板に日本と社旗をつるすらしいんだけど、日本左でいいんですよね?」  
「プロトコルで上位が左ですけど、法的根拠はないですよ」 

外交上の“プロトコル”とは“国際儀礼”と翻訳され、
催しや慣習に関し、歴史的事例に基づいて行われる慣行のことをいう。 

たとえば、車に乗るときの序列、エレベーター乗車時の位置、
公式の国家間の会食における座席の位置、 また国旗の並べ方など様々な規定がある。    
私が勤務していたホテルニューオータニは海外の国家主席や閣僚が利用することも多く、
玄関前のポールに国旗が掲揚されることも通常の光景だった。
また来館時には招かれた国の旗と招聘した日本の旗をロビーにセットし、その前で歓迎の意を伝えていた。  
2000室程度の客室を有し、2500㎡の会場をはじめ33の宴会場を持っていたため大きな一行が利用するには便利だ。
ロシア、中国、大韓民国、サウジアラビアなど200名規模となると、使い勝手のいいホテルだった。  
そんなニューオータニのみならず、都内のホテルがいずこも緊張感に包まれたときがあった。
1989年の年明け、まだおとそ気分が抜けない7日に昭和天皇が崩御した。
年号が平成に変わるとともに葬儀=大喪の礼が2月24日に決まる。
各国はその国交関係のつながり、国情に合わせて参列者が来日する。その数150。これに各国際団体なども加わる。
当然、日帰りで来ることはない。各国は礼を尽くして参列する。
よって、体調を鑑み数日の滞在をするのが一般的だ。 大使館を利用するという国もあった。
しかし大半は都内のホテルを利用した。 あの時、ホテルニューオータニは50か国程度の国が利用しただろうか。
利用する国、宿泊者、そのタイトルが続々入ってくる。ホテルは接遇事務局を作り、対応内容を決める。
何より、今回はさまざまなホテルに宿泊している参列者がプロトコル順に会場に入るから、接伴員が配置される。
1対象につき1名。これに外務省の担当者も配置される。 接伴員の業務内容は次の通りとなる
。
・接遇対象者のホテル館内の移動について同行、案内する
・翌日のスケジュールを確認し、ホテル事務局に連絡。食事の予約手配をする。
・外務省担当者と連絡を密にし、漏れのない接遇に努める
こんな感じだったか。   

プロトコルの観点から言えば注意点は大喪の礼当日、対象者をいかに正確にホテルから出発させるかに尽きる。
ここで、参列者のプロトコル順の序列を残しておこう。 

・皇族・・・国王、女王、皇太子
・国家主席・・・大統領、国家人民代表、首相
・閣僚・・・各大臣
といった序列になる。

もちろん次官クラスとなればこの次になる。
では、フランスとアメリカの大統領だったらどちらが上位になるか?これは在位の長さによる。
なお、同じ国家主席であっても、首相より大統領が上位になる。   
さて、この多くの対象者がプロトコルの序列に従って、会場に入る。つまり下位の者から順に到着。
そして出発時は上位者から会場を後にする。これを会場に入る前の道路で日本の警察は調整したのだ。
それはマラソンや駅伝の比ではなかったろう。
当然ホテル側もその会場(たしか新宿御苑だった)の到着時間を確認して逆算する。
その対象者の歩くスピードから客室からエレベーターホール、エレベーターの乗車時間、
ロビーでのエレベーターから玄関までの所要時間。これを何基かのエレベーターを専用にしてコントロール。
50もの対象を予定通りに送り出したのだ。  この時、各国の参列者はそれぞれの礼服を着用していた。
東京は雪が舞う陽気だったが、薄い民族衣装で出席するアフリカの国々の方も多かった。
プロトコルとはいかなるものか、どのようなことに注意するか説明を求められたら
この日の動きを詳らかに伝えれば目に浮かぶだろう。   

さて、旗の話だ。  
基本的に外から見て、左側が招かれたゲスト側、右側はホスト側、
日本で目にする場合日本は右側にセットされるのが普通である。
3か国になるとホスト国の旗をはさむ、4か国以上はアルファベット順で左側からというのが一般的のようである。
 
では、入社式のときはどうか、、、
日本の旗は国内では右だからといって社旗を左側にセットしたら一般的には違うと思ってほしい。
プロトコル上は、招待される上位国を左にするもので、入社式という会社主催の催事のホストは会社側である。
よって、右のホスト側に社旗、左に日本の旗というのが一般的である。  

ただ、「いつも日本の旗は右だと思っていた。」と言う新入社員がいたら、
「注意深く見ているんだね。ホテルでアルバイトしてたの?」と褒めてあげてもいいだろう。

~第三章 後半につづく~

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