Category カテゴリー

第八章 前半 :日韓友好の懸け橋


第八章 前半 :日韓友好の懸け橋
 alarm-959592_960_720
特別連載企画

~ クレーム対応のベテラン、椿氏が語る ~
 
●たしかに日韓友好の象徴だった
2000年代に入り、一つのブームが訪れた。
それは「冬のソナタ」という韓国ドラマ。
主演のペ・ヨンジュンは日本でもいきなり大ブームとなった。
以降、韓流スターは次々出てくるが、あれだけの大きなうねりとなり、社会現象となったのはいない。
初来日の平成16年春、空港はファンであふれ、大騒ぎとなる。
警察も警備体制をしっかり整えなければ、事故が起きる可能性があると危惧したのだろう、
イベント会場の警備を強化することに相成る。当然滞在するホテルも同様の体制が敷かれる。
繰り返しドラマは放映され、知名度は上がり続ける。
いやそれは異常ともいえる人気で沸きあがり、
私の家にも「泊まるとき教えてね」と近所の奥さんから言われるような状況だった。
そう、滞在するホテルはホテルニューオータニだった。

二度目の来日は11月の末だった。
一度利用しているから大丈夫という気持ちが所轄の麹町警察署員にもホテルにもあった。
ただ、ファンの数は明らかに初来日の時よりも増え、奥様族中心とはいえ、年齢層も若い方が増えていた。
主催者、警察、ホテルの打ち合わせで、ファンの方々が待機するのは駐車場スペースとし、
ロビーなどホテル利用客の妨げになるところで待機させない。
よって、駐車場は通路とは別にロープを張り、ファンの方々がいるスペースを確保した。

「こんな寒い時期に駐車場、そんなところで待ってるかよ」と、私はうそぶいていたが、
なんのことはない、到着の日数百名ものファンがぺ・ヨンジュン氏の姿見たさに、
この駐車場で待ちわびていたという。
当時、私はアシスタントマネージャーの長。
そして、この駐車場を仕切っていたのが安全管理室室長と宿泊部長。いずれも以前私の上司だった方である。

翌日、すでに駐車場は1000名近いファンで埋まっている。
ファンの方々もペ・ヨンジュン氏と同じ場所の空気を吸っていればいいという感覚なのか、
殺気立っていることはなくホテルのスタッフと穏やかに話している。
だから駐車場に、そんなに多くのファンがいるなんて印象がない。
一度、ロビーで女性客が何人も同じ方向に走っていった。見れば、その先に神田正輝がいる。
ところが、その姿を確認するや否や、女性たちはなんだとばかりに散っていった。
お目当ては神田正輝じゃなかった。
「おい、おい、日本のスターだぞ」改めてペ・ヨンジュン氏の人気を思い知らされる。

正午頃、レストランの苦情の電話を受けている時に、その事故は起きた。
神妙な顔をして、受話器を耳に当てて頭を下げる。
その間にアシスタントマネージャー席の電話がすべて点滅する。
気を取られていると、「おい聞いているのか」の怒声。
まわりから「救急車手配した」「けが人が出た」のメモ。
ようやく苦情の電話から解放され、次の電話をとると、今度はこの件での苦情。
「どういうこと」で始まった苦情。内容はホテルの案内ミスのせいで、怪我人が出た。
ホテルはどう責任をとるつもりか?というご指摘内容。
この時情報全くなし、よって「状況を確認して、ご連絡します」と返答。
しかし「だったらいいわよ」この時の対応力0点。
とにかく情報がなければ、受け答えもできない。

何が起きて、どんな被害があって、どのような対応をしているのか?
現場にいるゲストサービスの支配人に連絡を取り、状況を教えてほしいと伝える。
ほどなく、ヘルプに出ていた客室の支配人が来る。
「向こうが悪いんですよ。いきなり出てくるから」

「何が起きて、今どうなっているか教えてほしいんだ。
なにしろ何も情報がないのに、苦情の相手、説明もできないし、言われるままだ・・・」
と言ってるそばから電話。客室支配人は引き返す。焦っていた。いらだってもいた。
安全管理室室長から電話が入る。
「ファンの目に触れることなく、裏から出発する予定だった本人がいきなり、車で姿を現した。
ホテルはすでに出発したとアナウンスしたものだから、ファンが我さきに車に向かい将棋倒しになった。
救急車で10名搬送。被害者には主催者側がついている。
先方も今回の件は自分たちに非があると認めている。」

「わかりました。そのように説明します。
もし怪我を負ったという申し出があったら、主催者に対応してもらえばいいですね」
「そうしてくれ」

「お客様はホテルが出発したことを確認せずに、もう出発したというデマを流したんだ。
あんなデマを流さなければこんなことに・・・ならなかったって」

少しかみついた。
これだけのファンがいるのに、姿ひとつ見せない対応がいいのか、そんな思いがあんな行動を起こさせたんだろうな。

コメントをどうぞ

Spam Protection by WP-SpamFree

▲ページの先頭へ戻る