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第十二章 前半 :パワハラって


第十二章 前半 :パワハラって 
 
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特別連載企画
~ クレーム対応のベテラン、椿氏が語る ~

サービス残業にゆだねるな
企業の長時間労働のことが新聞を賑わせている。
たとえばヤマト運輸、セブンイレブンなどのコンビニ、HISなどの旅行代理店。
これに大手広告代理店、電通。いずれも我々庶民には広く知られる企業だが、
メーカーやゼネコンなどのように1件毎の売り上げはさほど大きくはない。
商品にかかる付加的なサービスで利益を得たり、薄利多売の中で儲けを得たりしている。
こうなると、長い時間を要してでも利潤を求め、突き出た金額については加減してもらう。
ということも現実としてある。こうしたサービス産業的な企業は同業社が増え、
単価が落ちている今日、突き出た金額=スタッフの残業代については目をつぶってもらうということもありうる。
残業代を申請しない、あるいは未払いといった報道を耳にすると、業種によって差ができる現実に悲しくなる。
私がホテルで宴会予約の業務に就いていた時、イベント的な物件には必ず電通グループの業者が入っていた。
もともと広告代理店ではあるが、イベントでの創作物、音響PA関係など行なう業務は多岐にわたる。
また、企画書を作成してくれるので、ホテルの現場はそれに合わせて確認すればいい。
会場を提供する我々にはこの電通が入るだけで、業務量、手間が大幅に異なっていた。
当時、どれくらいの金額で請け負っているのか確認したことがある。結構な高額だ。
だが、創作物の費用、人件費、そして何より開催前日の仕込み。
ホテルの前日の物件が終了してからの搬入、設営、リハーサル・・・当然帰れないこともある。
その宿泊代などの経費。それを考えたら決して高いものじゃない。
そのような状況で月間100時間以上残業するのは当たり前と彼らは考えていた。
パワハラ、過労死といった問題が生じることの温床はここにある。

当時、このように仕事をしていた人たちが今日幹部になっていることと思う。
時の流れは、いくらでも遅くまで仕事をしていた過去を美談でも、
よくやったと感心されるわけでもない。
ただ、「労働基準法により1週間40時間の労働時間」
「特例としての残業時間については週15時間、月45時間を上限とする」

当たり前のこととしてこんな通知が回ってくるだけだろう。
「これじゃ業務がまわらない」口には出さないが、これが偽らざる本音ではないか?
私が現在勤務している会社も、あまり残業時間が多いようだと、
支配人にはその月の状況を伝えることがある。
「なるべく調整を図り、規定の時間を超えないよう努力すること」というお知らせなのだが、
どうやら満足に残業もつけさせてもらえない、という状況になっているらしい。
つまり、今月はもう残業の規定時間を超えている(超えそうだから)
調整するように、各施設のトップからお達しが流れるようだ。
当然、業務が多忙なところほどその傾向は強い。

そういった施設では何人かその施設の業務を熟知し、手際よく業務を執り行うスタッフがいる。
彼らはどうしても自分の業務量を基準に考え、周囲のスタッフも同様のレベルに達するよう叱咤激励する。
一方教わる方は自身の業務状況を改めて見直すと、劣っていることを悟る。
え、こんなに自分は売り上げ低いのか、
劣っているのか、このままだとだめだ、怒られるかも、評価悪くなるかもと、懸念する。
いわゆるパワハラと認識され、
被害にあったスタッフが出勤しなくなった施設の支配人に尋ねてみると、
多くは被害者よりも加害者の方を重んじている。
「あのまま野放しにしていたら、みんなの足を引っ張るだけ」といったような言葉が返ってくる。
またこのような被害者タイプのスタッフは総じて残業時間が多い。
同じ業務量であっても、事務処理能力の違い、効率的な動きなど諸事情によって労働時間に影響が出る。
しかし、この能力差というものはキャリア、能力などにより当然生じてくるものだ。
もしこれをフェア、公平にしたいとなれば、労基法に基づき1週間40時間の労働時間を謳い、
残業については、各人の事務処理については認めず、もしくは一律何時間と定めることになるか。
そして本来の残業については支配人が認める共通の作業に限るとしなければならない。
翻って電通のケースを考えてみよう。
おそらく、スタッフの残業の業務内容を上のスタッフは把握していなかったはずだ。
そして、1週間15時間、1ヵ月45時間の問題に直面したら、
「だったらつけなければいい」という発想がどこかにあったかもしれない。
曰く「だって、俺たちそうだったもんな」という思いをちらつかす。
規定に合わないことを指示することはないだろう。
ただ、「俺たちのころは・・・」「何時間も仕事したよな」と口にすることはあるかもしれない。
上司からそんな話を聞けば、そうしなきゃいけないか、と思う。
少なくとも構わず残業をつけるのは控えるだろう。
その意を受けたさらに下のスタッフは「残業つけるなってことだな」と結論付ける。
この発想の伝播はどこの企業でもおなじだ。
時折、ホテルニューオータニの宴会予約時代のメンバーと会う。
懐かしい話ができるから、その時代を共有した仲間だからあまり気兼ねはない。
好きな話をするから自分の自画自賛の話もしてしまう。
ただ、致し方ないことだが、どうしても「あの頃はこれだけの婚礼を担当した」
「こんな物件があった、大変だった」というのは後輩にはあまり面白くない。
「最近の連中は料理の内容もお知らないんだ、ソールムニエルって説明できないんだ」
こういう話って、あまり聞きたくなよね。
「孤独なムニエルってどんな感じかね?」
「何、何言ってんだよ」
ここまでならちょっとはぐらかすぐらい。つい調子に乗ってしまい
「ソウルといえば、なんで韓国の歌なんて、日本で流行るのかな?」
「それって、ソウルミュージックのこと?」
「ああ」
「あれはアメリカ黒人を中心とした音楽。M.ジャクソンとかEWF、知ってんだろ」
「ジャイケル・マクソン・・・よく知ってるよ」
ここまでくると嫌われる。これも自己中心型。

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