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第十四章 ② :手数料って・・・ほら旅行業者に払っているものです


特別連載企画

~ クレーム対応のベテラン、椿氏が語る


●DR招いての学会は気を遣うことばかり
学会と呼ばれる病院の先生方が集まって、勉強会を行う催しはほぼ年間実施されている。
その中でも土曜日に開催されるものは、午後から講演会、夕方から懇親会というスケジュール。
その上ホテル一泊となる。
一般的に、主催する製薬会社は病院の先生一人にMRと呼ばれる担当員が一人つく。
それはそうだろう。病院で薬が採用されたら大きい。
この日、MRはDRがお休みになるまで、接待に努める。
予約先の製薬会社がそういった体制だから、旅行会社も通常より厚い体制だ。
室料は個人の宿泊料金と変わらない。ホテルにとってもありがたいわけだ。
よって、チェックインで待たせられない。
チェックインは、講演会の前か後。
接待する方々もいるから実際に宿泊するお客様の倍以上の方がロビーに集まる。
こういう状態を目にするとなぜか待たされている印象をもってしまうのが人間の常だ。
「遅いな」「どうにかならないかな」と口にする。
さて、こういった物件で病院までお詫びに伺ったことが2度ある。
1度目はゲストサービス課のとき。チェックアウトの際、お客様がベルデスクに立ち寄られる。
東京駅発の電車の問い合わせ。デスクに入っているスタッフは時刻表を見て案内。
ところが、当日日曜日には運行していない電車を案内してしまった。
この場合、このお客様に速やかにお詫びをするが、あまり勝手には動けない。
流れとしては、旅行会社に連絡。旅行会社から主催者 製薬会社に連絡。
ホテルはその指示を待つということになる。
なぜか?主催者はDRの身に降りかかったことを認識していなければならない。
「このあいだホテルでこんなことがあってね」なんてDRに言われたら、
全く目が行き届かなかったものと周囲からみられる。
主催者にとって他の製薬会社のことが気になるし、その意を組んで旅行会社は中継役に徹する。

そんなわけで、このときも伺ったのは発生時から1か月後。
旅行会社の方は同行しなかったが、MRの方がうかがうという日に同行させていただいた。
怒りは収まっているかと思ったが、収まっていなかった。
私の名刺を左手でチラチラ振り「俺も軽く見られたな」と言っては右手の人差し指でつま弾いていた。
これは怒っているのではなく、収まりが付かないという感じだったのか?
結局持って行ったお菓子とホテル利用券をお渡しすると「これはもらう」と言われた。
もっと肩書が上の人を望んでいたのだろう。
まあ、品物を受け取ったら、どうこう言おうが、これで納得ということと私は認識する。
これは各人の認識の問題となるが、基本的には主催者(製薬会社)のメンツが立てばいいと思っている。
DRは自分のところにお詫びに来るのはどれほどの肩書か、ということは気になる。
この時の私のような課長ぐらいだと納得はできないだろうが、
そのためにDRが製薬会社を毛嫌いすることもないだろうし、
次回もニューオータニと言っても参加するだろう。

今回のホテルの対応は不十分だが、荒げるものでもない。
それに手土産も受けとりゃ納得とみてもいいだろう。と私は認識する。
2件目はアシスタントマネージャー時代。
苦情の内容はチェックイン時、フロント係員に「今日は暑いね」と声をかけた。
「7月ですから」対応したスタッフの返答がこれだ。さほど怒りを露わにするわけではなく、
他のホテルに行きたいからコンシェルジュデスクはどこか、と尋ねる。
「他のホテルの空き状況を調べて下さい」とフロント係員から引き継いだコンシェルジュはお客様の希望を聞き、
当ホテルに近い赤坂プリンスホテルに電話を入れる。
(当ホテルに泊まるのによく他のホテルを調べるよ)
しばらくして製薬会社MRと旅行会社担当者が来て、説明。部屋に案内。その日は他問題なく終了。
翌日、チェックアウト。追加分もあるからとお客様は支払いを希望。
フロント係員説明するも、納得しないためお支払いいただく。
(え、本当かよ。そもそも室料自体お客様に伝えない)
それをどのようにしてかわからないが、製薬会社と旅行会社の知るところとなる。
私が出勤した時、製薬会社担当者、旅行会社、それにホテル側フロント支配人が今後について話をしていた。
前日休みだったので、私は何があったのか全く分からず。しかしこんなことはあってはならないことである。
フロント支配人から昨日から今日までの話を聞く。話の真偽を疑うつもりはないが
「どうも、問題の多いお客さんみたいです。」「過去にも何かあったの?」
「そのようです。またあのお客さんかって・・・」「でも今回は言い訳できないね」
フロントの支配人だから、部下を守りたいのだろうな。
でも相手、お客様のアラを探そうとすることが気に入らない。
確かにこのお客様、言葉尻を捕らえて、真綿で担当者の首を絞めるような雰囲気は感じ取れるけど・・・
お盆前に宮城の病院にホテルの営業担当と向かっていた。
本来なら、フロント支配人だろう。
ところが「しかるべき人」「きちんとお詫びが言える人」などなど
いくつかの理由からおだてられ、私が行くことになった。
宮城蔵王の麓、いい温泉もある。美味い麺もあれば肉もいい。駄目だ。
話は耳にしているが、自分の問題として捉えていないからどこか楽観視している。
そんな思いを見透かされたように旅行会社の人からきつく言われる。
「今回のことはすべてホテルに責任がある」
「こうして製薬会社の方、代理店の我々が来ていることをしっかり肝に銘じてほしい」
というニュアンスをさり気なく聞かされる。(こりゃ貧乏くじだったな)
「ちゃんと聞いていますよね」
「はい、伺っています」
私が手にしている紙袋を見て「それは?」「手土産です」
(いつもはニューオータニのものだが、今回はとらや)上司は何も言わないが、この若い方は細かい。
DRは蔵王の山並みに目をやりながら、最近話題になっているデザイナーズホテルの話から始めた。
「何も暑い、寒いを聞いてるわけじゃないんだ。挨拶だよ、挨拶」
「このホテルのスタッフなら、まず自分のホテルを勧めるだろう。それなのに・・・」
道理がつながるように話をする。ホスピタリティの在り方を朗々とまくしたてた。
慣れているんだろうなと感心した。旅行会社の上司もこれ以上はない、と思えるほどの笑顔で相槌。
それにしても、「またあのお客さんか」って言ってたのは、本当か。誰もがこのDRに傾倒する。
おそらく、翌年も学会があればまた同じような苦情を言うんだろうな、と思った。
この人はそういう方だ。決して悪い方じゃない。
でも、人のアラが目につきモノを言わずにはいられないのだ。
翌年、同じようにこのお客様から苦情があったと聞いた。
「去年もお詫びに来た方に言ったのにな」そうぼやいたことだろうな。
1年後、退職した私の耳にそんな話が入ってきた。
こういうお客様は多い。どうしても気になるからモノを言う。
聞く方は苦情と意識する。自分の話を感心して聞いてくれる人がいればいるほど落ち着く。
この時のお詫びについては、当日、主催者、旅行会社担当者と打合せをした
ホテルの担当者が同行すべきだった。周囲の安心感が違う。
それにしても、製薬会社の物件は気を遣う。
 

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