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「言葉の階(きざはし)」第六章:商店街


特別連載企画 第六回 
~  商店街 
 
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私が生まれ育った町は、五反田と蒲田を結ぶ池上線沿線にある。
この沿線はどの駅で降りたっても、その長さに違いはあるが、駅から商店街が延びる。
駅の近くには、花屋と薬局があって、歩を進めると、八百屋や肉屋、魚屋という食卓をにぎわすものを扱う店が並ぶ。
そして私たち子供にとってなじみ深い文房具、本屋、そしてお菓子屋といった店舗も目に入ってくる。
当時、食品ならなんでも揃うスーパーマーケットはあることはあったが、商店街の中心はあくまで小売店ではあった。
梅雨時になると、時節柄多くなってきたハエがたからないように、
天井から吊るしたハエ除けテープがのんびりと回るようになり、
お菓子屋のアイスボックスにはいかにも冷たい感じのキャンディーがあふれる。どれも夏の風物だ。
さまざまな工夫を凝らして、日本人は夏の暑さをしのぎ、虫の被害を押さえていた。
なんてしばしそんなもんに目をやっていたら、打水をかけられた。たしかにこれなら涼しい。
今ではこんな商店街の姿をあまり目にすることはなくなった。お菓子屋の量り売りでの商売。
魚屋で魚をさばいてもらうこと、籠に入っている果物に傷がついていないか確認すること。
モノを買い求めるということは、会話が始まるということであり、少なからず知恵を付けることでもあった。
量り売りで買うお菓子は、いつもリクエストしたグラム数より多く、「おまけだよ」という言葉が添えられたが、
元の値段が損をしない金額に設定されているのは、当然である。
先日、長野の上田市に足を延ばした。駅を降り立ち、上田城ではなく菅平方面に向かう通りを歩いた。
地方都市の多くはシャッターが下ろされているような状況になっているが、新幹線が走るこの町はまだ人通りも多い。
結構時間もあるので、本屋でもないかと思ったら、2軒あった。
それも懐かしい佇まい――店の扉の手前に棚があって、そこに週刊誌や月刊誌などちょっと気を惹くものが並べてある。
それに回転させながら幼児用絵本を手に取れる、回転式のキャビネット。
「懐かしい」 まさに子供の頃、足を運んだ本屋だ。
今日、本屋は大型店だけが残る状況となってしまった。昔はどこの町にもどこの通りにも本屋はあった。
子供たちは毎週マガジンやらサンデーが発売される日になると、こぞって本屋に足を運んだ。
買う買わないにかかわらず、お気に入りのページを探す。
そんな子供たちもいつの間にか問題集、ドリルを買い求めるようになり、
やがてちょっとエッチな記事や写真に興味を抱き、店主の目を気にしながらそんな雑誌のページをめくったりする。
だからエッチなものを見る時は人目につかない本屋を選んだものだった。
本屋は時折胸ときめくところにもなった。まじめな本でも買いに行こうと、
自分にとって一番メインにしている本屋に行くと、ちょっと気になる女の子がいたりする。
「この店なら大丈夫」とエッチな本など目もくれず、言葉を交わすそんなところでもあった。
一度こんなことがあると、その子がよく足を運ぶ本屋だと思い、何の用もないのにその店に行ったものだ。
それでうまくいったためしがないけど。高校生になると、自分の家から離れた駅で降り立ったものだ。
「あれ、椿君どうしたの?」
「いや、ちょっと本屋に・・・」(そんなわけないだろ)
いずれにしても、本屋の存在は貴重だった。

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